肥満外来とは
肥満外来とは、肥満症の治療を行う外来です。肥満とは、BMI≧25のものを定義します。さらに、肥満があり、肥満に起因する健康障害を合併する人を肥満症と定義します。
肥満症の治療の目的は、他の疾患の治療と同様で、寿命や健康寿命に加え、生活の質(QOL)が肥満症によって損なわれることを防ぐことにあります。肥満や肥満症の方は、社会の認識不足や誤解からくるスティグマ(偏見や差別)に苦しむ方も多く、それがQOLの低下へと繋がっていきます。
肥満症の原因
肥満症の原因は、他の慢性疾患と同じで、遺伝因子や生育や発達における要因、社会的要因を含むさまざまな要因が関係します。それにも関わらず、他の慢性疾患と比べて必要以上に食生活やライフスタイルが原因と言われ、「自己管理能力が低い」という偏見にさらされていることも多いのが現状です。
このような肥満者に対するスティグマ(偏見や差別)により、「自分が太っているのは自己管理の問題であって、医療を受ける対象ではない」といった誤った認識をしてしまい、適切な治療の機会を奪われている方も多くありません。
さらに、「痩せたいけど、つい食べすぎてしまう」「減量に成功してもすぐにリバウンドしてしまう」「何から始めたらいいかわからない」と悩んでいたり、諦めている方も多いと思います。
肥満や肥満症の原因には、遺伝子が関わる肥満もあります。これらの肥満は二次性肥満と呼ばれ、適切に治療することで肥満が解消される可能性があります。
当院の対応
当院では、二次性肥満も含めた肥満の原因の精査を行い、食事療法や運動療法、薬物療法を行っていきます。また、適応がある方へは、関連病院へ紹介し、減量・代謝手術もご提案いたします。医師、看護師、管理栄養により、患者さん一人ひとりに合わせた減量プログラムを提案し、生涯にわたって肥満を繰り返さない体質改善をサポートいたします。オベシティスティグマ(肥満者に対する偏見や差別)の解消を目指して、心身ともに人生がよりよいものになるよう、お手伝いいたします。
- 当院では、健康長寿を目的に日々の診療を行っておりますので、非肥満者の美容目的の過度のダイエットや保険適応外の薬剤投与は行っておりません。
肥満症とは
肥満症に起因する健康障害
- 肥満症の診断に必要な健康障害
- 耐糖能異常(2型糖尿病、耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧症
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低喚起症候群
- 運動器障害(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節・変形性脊椎症)
- 肥満関連腎症
- 肥満症の診断には含めないが、肥満に関連する健康障害
- がん:大腸がん・食道がん・子宮体がん・膵臓がん・腎臓がん・乳がん・肝臓がん
- 胆石症
- 静脈血栓症・肺塞栓症
- 気管支喘息
- 皮膚疾患:黒色表皮腫や摩擦疹 など
- 男性不妊
- 胃食道逆流症
- 精神疾患
当院では下記条件を満たす方が対象です。必ずお読みください。
- 高度肥満の方(BMI≧36)
- 肥満(BMI≧25)があり、肥満に起因する健康障害を合併している方
- 肥満(BMI≧25)があり、いびきや睡眠時無呼吸症候群を指摘されている方
- 肥満(BMI≧25)があり、膝痛、腰痛のある方
当院で行う検査
- 病歴聴取、身体診察を行います。
- 血液検査、尿検査、体組成検査を実施し、二次性肥満等の鑑別や生活習慣病の有無や状態を評価します。
- 必要に応じて、心電図、胸部レントゲン検査、動脈硬化検査、腹部超音波検査などを行います。
治療について
肥満治療の基本は食事療法、運動療法です。肥満外来で行う栄養指導は、減量のための食事内容や栄養の知識などについて主に指導していきます。
専門的な知識をもつ管理栄養士がメインで指導を行います。ご本人の生活やライフスタイル、嗜好などを考慮し、目標体重を決めていき、一人ひとりにあった食事療法をご提案します。
また、すでに糖尿病、高血圧、脂質異常症などの診断がある方は、それぞれの治療を併用しながら、減量のための食事指導・運動療法指導を行います。
すでに糖尿病状態にある方は、GLP-1受容体作動薬やSGLT-2阻害薬の投薬を検討します。また、BMI≧35の方には抗肥満薬(サノレックス)を検討します。
- これらの薬剤は条件に合わない場合や、美容目的のダイエット治療は適応になりませんのでご注意ください。必要に応じて漢方薬なども検討します。