院長ブログ

最近流行している「急性胃腸炎」―つらい時の過ごし方と受診の目安

2026.01.22

年明け以降、インフルエンザと同じくらい、あるいはそれ以上に急性胃腸炎の患者様が増えています。
吐き気、下痢、腹痛、発熱などが突然起こると、日常生活にも大きな影響が出ます。

急性胃腸炎の多くは数日で自然に回復しますが、過ごし方次第で回復のしやすさは大きく変わります。今回は、外来でよくお伝えしている療養のポイントと、受診の目安についてまとめます。


急性胃腸炎でいちばん大切なのは「脱水を防ぐこと」

急性胃腸炎の治療の基本は、原因がウイルス・細菌いずれであっても水分と電解質の補給です。
軽度から中等度の脱水であれば、点滴ではなく経口補水で十分対応できることが、多くのガイドラインや総説で示されています。


つらい時の具体的な療養アドバイス

① 無理に食べなくてよい
食欲がないときは、無理に食事をとる必要はありません。胃腸を休ませることが回復への近道です。

② 水分は「少量を、こまめに」
一度にたくさん飲むと吐き気が悪化しやすくなります。
ひと口〜数口を、数分おきに飲むのがコツです。
水だけでなく、下痢や発汗で失われる塩分を補える経口補水液も有用です(冷たすぎない温度がおすすめです)。

③ 下痢止め(ロペラミドなど)は基本的に慎重に
感染性胃腸炎では、下痢は体内の病原体を排出する反応でもあります。
特に
・発熱がある
・血便がある
・強い腹痛を伴う
といった場合は、自己判断で下痢止めを使うことは避けた方が安全です。
症状や背景によっては使用を検討するケースもありますが、医師の判断が必要です。

④ 抗菌薬(抗生剤)は多くの場合不要
急性胃腸炎の大部分は自然に軽快し、 基本的に抗菌薬を使う必要はありません。
症状の重さや経過、検査結果を踏まえて慎重に判断します。

⑤ 回復期の食事は「消化のよいもの」から
症状が落ち着いてきたら、
おかゆ、うどん、スープ、豆腐などから少しずつ再開します。
脂っこいものや刺激物、アルコールは回復を遅らせることがあるため、しばらく控えます。


こんな場合は、様子見せずご相談ください

  • 水分がほとんど取れない、すぐ吐いてしまう
  • 尿が極端に少ない、ふらつきがある
  • 血便や黒っぽい便が出る
  • 夜間に目が覚めるほどの腹痛がある
  • 高齢の方、基礎疾患がある方
  • 症状が1週間以上続く、または良くなったり悪くなったりを繰り返す

「治ったはずなのに続く」場合に考えること

急性胃腸炎をきっかけに、腸が過敏な状態となり、下痢や腹痛が長引くことがあります(感染後に起こる腸の過敏状態)。
これは決して珍しいことではありません。

一方で、
・胃炎や逆流性食道炎の悪化
・腸の慢性的な炎症
・年齢や症状によっては、別の病気が隠れている
といったケースもあります。

症状が長引いて日常生活に支障が出ている場合は、薬で整えながら、必要に応じて胃カメラや大腸カメラで状態を確認することで安心につながることもあります


まとめ

急性胃腸炎は多くが数日で回復します。
大切なのは、無理をせず、脱水を防ぎ、回復を待つことです。
ただし、「なかなかすっきりしない」「いつまで様子を見てよいか迷う」場合は、早めにご相談ください。

体調に合わせた対応を一緒に考えていきましょう。


参考文献

  • IDSA Clinical Practice Guidelines for Infectious Diarrhea, Clinical Infectious Diseases
  • Thabane M, et al. Post-infectious irritable bowel syndrome: systematic review, Gut
  • Schiller LR. Antidiarrheal agents, American Journal of Gastroenterology
  • Acute gastroenteritis in adults, review articles