便潜血検査が陰性でも安心できない?内視鏡でわかる大腸がんの本当のリスク
2025.09.10
こんにちは。ながお内科クリニック院長の長尾一寛です。
今回は、「便潜血検査が陰性だったけど、本当に安心していいの?」という疑問にお答えします。
健康診断で広く行われている便潜血検査(いわゆる“便の検査”)は、大腸がんの早期発見に有効なスクリーニング方法です。
ただし、この検査には限界もあります。実は、検査結果が“陰性”でも、大腸がんやポリープが見逃されてしまうことがあるのです。
陰性でも“大腸がん”が見つかる理由とは?
便潜血検査は、「便に血が混じっているか」を調べる検査です。
つまり、出血していないがんやポリープには反応しないため、初期の病変が見逃される可能性があります。
実際の研究でも、便潜血検査が陰性だったのに大腸がんと診断された症例は多く報告されています。
- ある研究では、便潜血陰性であったにもかかわらず、大腸がん患者の36%が見逃されていたとされています(Miles et al., 2015)。
- また、右側(上行結腸)のがんは便に血液が混ざりにくく、特に見逃されやすいとする報告もあります(Letsou, 2006)。
- 検体提出の遅れにより、本来は陽性となるはずの出血が反応しない「偽陰性」も確認されています(van Rossum et al., 2009)。
- さらに、男性は便潜血陰性でも、女性の陽性者よりも大腸腫瘍のリスクが高いことが示された研究もあります(Brenner et al., 2014)。
このように、「陰性=安心」とは限らないのが現実です。
内視鏡でわかる“本当の安心”
大腸内視鏡(いわゆる大腸カメラ)では、出血の有無に関係なく、腸の粘膜を直接観察できます。
小さなポリープや初期のがんでも、しっかり確認して必要に応じてその場で切除できるのが大きな特徴です。
当院でも、便潜血は陰性だったものの、内視鏡でポリープや初期がんが見つかるケースは珍しくありません。
次のような方は、ぜひご検討ください
- 50歳以上になった
- 便潜血検査は毎年陰性だが、5年以上内視鏡検査をしていない
- ご家族に大腸がんの方がいる
- 便が細くなった、残便感がある、体重が減ってきたなどの変化がある
大腸がんは、早期に見つければほとんどが治る病気です。
「大丈夫かな?」と少しでも気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。
【参考文献】
- Miles A, Rainbow S, Thomas J. Perceptions about risk of colorectal cancer following negative screening tests: a review of the literature. Health Expect. 2015;18(5):1428-1437.
- Letsou A. Colonoscopy in patients with negative fecal occult blood tests. Gastroenterol Clin North Am. 2006;35(3):549–559.
- van Rossum LG, et al. False-negative fecal occult blood tests due to delayed sample return. Clin Gastroenterol Hepatol. 2009;7(4):447–453.
- Brenner H, et al. Risk of colorectal cancer after negative guaiac and immunochemical fecal occult blood testing: population-based case-control study. Gastroenterology. 2014;147(1):131–139.